むけ (剥け) peel off
(1)マット調のコート紙を紙折り・丁合するとき、インキの乾燥が十分でないと印刷面と機械の接触により紙面が汚れることがある。インキの剥けによる。(2)和紙や羅紗(らしゃ)系の紙で貼り函や表紙貼り加工するとき、接着剤に含まれた水分が乾燥不十分であったり湿度の高い季節などには、摩擦によって表面が紙むけすることがある。
むさいしょく (無彩色)
明暗だけで表現したものを、ひとつの色として無彩色と呼ぶ。白・灰色・黒のこと。モノトーン。
むしいりぼん (虫入本)
和装本が紙魚(しみ)のために、ところどころ食い破られた本のこと。和装本はたいてい、紙を二つ折りにしているので、その間に紙をはさんで修理する。これを「紙入れ」といっている。また、1枚貼りの時は「裏打ち」をする。修理の糊(のり)には、必ず稀薄(きはく)な昇汞水(しょうこうすい)を入れて、糊の腐敗(ふはい)や紙魚の発生を防ぐことである。
むじぼん (無字本)
白紙を製本したメモ帳、スケッチブック等のこと。罫線が印刷されているだけのノート(学習帳等)、ポケットコンピューター用の伝票に罫線の印刷もないまったくの白紙にミシンを入れるだけのものもあり、こういうものも無字本と言えばいえるかもしれない。
むしょくカーボン (無色カーボン) non carbon
「感圧カーボン」「ノーカーボン」「ノンカーボン」のこと。→感圧カーボン
むしり (毟り) stripping
打ち抜き機にかけられた後の厚紙の不要部分を取り除くこと。むしり装置(ストリッパー)付きの打ち抜き機が普及してきた。つなぎによってシート状につながれたままのものはハンマーなどで叩き落とす。
むせんとじ (無線綴じ) perfect binding/adhesive binding
針金や糸等の綴じ材料を用いずに、接着剤により折丁・ペラ帳等の背をすべて一体に接合し、表紙も中本の背に塗布された接着剤の効果で中本と接合される製本方式。丁合された折丁は、一冊ずつ立ち上がり装置を経由してジョガーで突き揃えられた後、無線とじ機(バインダー)のクランプの中に入って、しっかり把持されたまま、この後の背加工を次々にほどこされる。ミリングステーションでは背が3~4mm切り落とされ、次のラフニング装置ではサンディングヘッドにより背の紙繊維をケバ立たせて、さらにノッチングヘッドによりガリを入れる。この後塗布される接着剤の浸透を助長し接着剤の付着面積を増大して接着力を高めるためである。グルーステーションに移動し、通常2個の回転ローラー(糊ローラー)によりホットメルト接着剤が塗布され、逆回転スピナーが糊の厚み(塗布量)を調整する。背加工は以上で完了し、背に接着剤を塗布されて中本はクランプにしっかり把持されたまま表紙が背に合わせられるステーションへ移動する。表紙が貼付されるまでの間に、ホットメルトは紙繊維の間に浸透し急速に接着効果を増大して中本の接合(背の一体化)が進行する。カバーフィーダーから表紙が中本の到着にタイミングを合わせて給紙され、背に塗布されたホットメルトのオープンタイム内なので表紙は中本の背に貼付される。次いでカバープレスステーションでは、背側(下から上へ)と背の左右両横(両側から真ん中へ締める)から強圧をかけ表紙と中本の接着を完全にし、背の形成を整える。この後クランプが開放され、本はデリバリーチャンネルを通過して、レダウン装置でコンベア上に寝かされ、三方断裁機へ搬送される。化粧立ちされて本は完成する。
アジロとじは、無線とじの一種。折丁製作の時点であらかじめ折り目にアジロ穴が明けられていて、ホットメルトが中本の背に塗布されるとアジロ穴にゾル状のホットメルトが入り込み、折丁同志の接合が一段としっかりする。「アジロ無線」とも呼ぶ。無線とじと同じバインダーでアジロ無線をつくることができる。背加工のうち、背を切り落とすミリング工程が不要等、機械調整に若干の違いがある。
いずれも糸かがりした本に近い見開きの良さが得られ、1時間当たり3000冊のレベルのものから12,000冊/時の高速製本もできる。超高速では毎時40,000冊の機種も発表されている。作業性も優れ、低速ラインは丁合から三方断裁機の取り口まで2人で操作できる。高速ラインは省力化・省人化するための関連機器が多数開発されている。
メーカー 伊藤ブックマシーン(株)、東京出版機械(株)、(株)西岡製作所、ハイデルベルグPMT(株)、ピービーエム(株)、(株)ホリゾン、ミューラーマルティニジャパン(株)、芳野マシナリー(株)
むせんとじき (無線綴機) threadless binder
無線とじ様式の製本に用いる機械。ふつう単にバインダーと称している。
むせんとじラインき (無線綴ライン機)
丁合機、無線綴機、三方断裁機と接続して、丁合から無線とじ三方仕上げまで行う機械である。
標準的な帙の仕立て方。上蓋(うわぶた)・中蓋(なかぶた)・底(そこ)の三つの部分が溝(みぞ)で接合されている。「半袖」は中蓋が無双帙の半分の大きさ。「鏡帙(かがみちつ)」は中蓋が白紙になっている。
むそうひょうし (無双表紙)
1枚の表装材料を貼って仕立てた表紙。完(まる)表紙ともいう。広義には、仮製本や雑誌などのくるみ表紙などもその範疇(はんちゅう)に入る。「おかしわ」ともいう。
むそうぼん (無双本)
天下無双の意味で、稀少本(きしょうほん)中の王者格の本。つまり内容、装丁とも立派であることが必要条件である。
むだおとし (無駄落とし)
「中落とし」「どぶ断ち」と同じ。
むだがみ、むだばり (無駄紙、無駄貼り) papering up
製本工作中に汚れを防ぐため用いる紙。本が仕上がれば取り去ってしまう。継ぎ見返し(額貼り)にいったん貼って、あと剥がしてしまう仮見返し紙等がこれにあたる。
むだだち (無駄裁ち)
必要以上に余白を付けて断つこと。精度の厳しいもの・あとの製本作業を残しているものの断裁は断裁線よりも大きめに余白をつけて一度断裁し、仕上げ断裁の確信がもてたところで化粧断ちする。最初の断ちはムダのようにみえるところから「無駄断ち」といった。→二度断ち
むてんぼん (無点本)
漢文で書いた書物に訓点および、返り点や捨仮名のないこと。素本(すほん)ともいう。
むらとり(むら取り) makeready
印刷準備作業の一つ。印刷面の文字のかすれや色の再現性、汚れ等をださないために刷版上で行う調整。